「悪性の細菌感染で空気が入っていないか調べるためにレントゲンをとりましたが、大丈夫でした。これから、抗生物質の点滴をします。20分ぐらいかかると思います。あす皮膚科の外来に来てください。10時に予約しておきます」
目がさめた夫は大分楽そうだった。
「帰りは救急車使えないんですよね」
看護婦さんいわく「介護タクシー調べたんですけど、今の時間はやっていないので。車椅子でタクシーまで運びますから。あとで松葉杖の歩行訓練をしましょう」
ゆっくり歩いても20分の距離に、介護タクシーで!?
介護タクシーってすごく高い。とりあえず、あわてて出てきたので手持ちのお金がほとんどないため、支払いをするのにお金を下しに行かなければならない。そのことを話して、
一番近いコンビニは、どこか聞いた。
結局二つあるコンビニのどちらも同じくらいの距離だといわれたので、自宅の前にあるコンビニに行くことにした。点滴がまだあと30分ぐらいかかるという。短い足ながらも速足で歩き出した。子供に電話したら保険証を持っているというので、それもとりに行くことにした。保険証がなかったら、大金がかかってしまうところだった。
支払いは7000円近くかかった。保険証がなかったらやばかった。夫の寝ている待機所に戻ったら、車椅子に乗せられていた。看護婦さんが、「介護タクシーのリストです」と紙を渡した。
タクシーを呼んで乗り込むまで看護婦さんが付き添ってくれた。車椅子から松葉杖を使って、タクシーに乗った。道路はすいていたので、すぐに家についた。
家はマンションだ。タクシーが止まった駐車場のスペースから家に入るには、3段の階段が2カ所ある。松葉杖をついて、車から降りた。3歩歩かないうちに転んだ。もう起き上がれない。前に半身まひになったときと違う足が腫れているようだ。本人に確認しても覚えてないと怒り出す。コンクリートの上に痛む足を打ちつけて転んだ夫はさぞかし痛いだろう。と思うが、さほど苦しんでいる様子はない。もともとすごく痛いから、なのか、痛い方の足はぶつけなかったのか、わからない。
立とうとしても立てない。はいはいしていくしかない。私が力を貸しても起き上がれそうにないし、またそれで転んだら痛そうだし、すぐ私に暴力を振るうので、はっきりいって、肩を貸すのはいやだった。
数年前、痛風のために、近くの医者に行くとき、頑張ってつれていってあげたのに、薬をもらったとたんに、いつもの悪口が始まり、怒り出した。仕事を休んで、つれていってあげたのに、そんな態度するなら、もうつれていってあげないと宣言した。
そして、その次に痛風になったとき、私は夫をほっておいた。するとお酒を飲むと痛くなるということを学習した結果、お酒を飲まなくなり、1週間で回復した。
その後、半年は酒を飲まなかった。
薬をくれた近くの整形外科は、「今回だけは薬を出しますが、内科へ行ってきちんと治療してください」と言ったっため、内科へ行くと、尿酸値をさげる薬をくれた。すると夫は安心してまた酒を飲み始めた。そして、その後脳梗塞で半身麻痺になり、その次は、この蜂か織炎である。
このままでは、無理なので、子供を電話で呼んだ。夜中の二時過ぎに起きているかなと思ったが、まだ眠っていなかった。
引っ越し用の台車を持ってきた。
「ちょうどこれがおいてあったから持ってきた」
どこの家が使ったのかわからないが、車輪を4つつけただけの板だったが、ラッキーだった。その上にのせて、動かし、階段ははってのぼり、また台車に乗せて動かし、階段をはって上り、台車に乗せて、エレベーターに乗り、家にたどり着いた。そしてはって家の中に入った。ほふく前進と本人は言ったが、はいはいにすぎない。